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すり傷治療の新しい考え方

すり傷治療の新しい考え方

小中学校で運動会などの行事が行われる季節となりました。転んでケガをされるお子さんもいることでしょう。すり傷やヤケドをした場合に昔から行われてきた処置は、とりあえず救急箱に入っている赤チン等の消毒薬を塗って、ガーゼを貼るというものだと思います。
ところが消毒薬には組織障害性があり、消毒することにより摩擦傷は当初の状態より深くなる可能性が指摘されており、最近は傷を消毒しない医療機関も増えています。(消毒をする従来の処置法との直接の比較は困難であり、ここで優劣を論じるものではありません。)
そもそも傷を消毒して乾燥させるという方法は、19世紀の偉大で神格的な細菌学者パスツールが、「傷の化膿を防ぐためには消毒と乾燥で細菌の侵入を防ぐべき」という考えを提唱したことから始まり、20世紀後半までその真偽は誰にも検証されず、大学医学部にケガの治療法を研究する專門科も無いまま、儀式的に傷の消毒が行われてきた経緯があります。
傷口を消毒し乾燥させると、皮膚や皮下の細胞は死んでしまい、最終的にミイラとなった死骸(カサブタ)となります。実はすり傷などの傷口からは、ジュクジュクとした傷を治すための液体が分泌されているのです。黄色いジュクジュクした傷だと患者さんからは「膿んでいる」ので受診したと言われることがありますが、本当に膿んだ傷と言うのは真っ赤に腫れて、触らなくてもとても痛いものです。実は傷の黄色いジュクジュクの中には40種類以上の「細胞成長因子」の他、頑張って傷を治している細胞が存在しています。それらがちゃんと傷を治すのを手助けしてあげるためには、傷が乾燥しないように何かで覆ってやる必要があり、そうすることによって傷の痛みは軽くなり、さらに早くきれいに治ります。

それではケガをした場合、どう治療すればよいのでしょうか。

すり傷治療の新しい考え方

ケガをしたらまず受傷部位を水道水で洗いましょう。日本の水道水には基本的にバイ菌がいません。泥もバイ菌も入り込んだ砂も、水道水で洗い流すのが良いです。これだけでかなり傷の治りが違います。「しみる」消毒は傷を痛めるので不要であり、さらにガーゼやガーゼ付き絆創膏を貼ると、水分を吸い取るので傷が乾燥してしまいます。最近は新しい治療が普及してきており、家庭用のハイドロコロイド被覆材が販売されていて、多くの場合それを使うのがよろしいです。

ただしこの治療法は全ての傷が対象になる訳ではなく

自己判断できない場合は、直ちに医療機関を受診して下さい。

望月医院 望月 護先生
平成27年5月

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