医療情報

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NIPTとNT ―最近話題の出生前診断―

朝比奈
「大川先生、最近、羊水を調べないでも出生前に遺伝子異常が診断できる新しい方法ができたんですってね?」
大 川
「そうなんですよ、今日はそのことについてお話しましょう。」
大川先生:日野市医師会 副会長(学術ほか担当)
朝比奈先生:日野市医師会 広報部・情報部 担当理事
(1)NIPT(non-invasive prenatal testing)

母体の血液で赤ちゃんの奇形が分かると言われている検査ですが、検査できる奇形は13トリソミ一、18トリソミ一、21トリソミー(ダウン症)の3種類だけです。年齢制限があって、35才以上の妊婦に限られます。妊娠10週以降になると検査できます。若い人では誤診が多く、35才の妊婦では『陽性』(つまり奇形)と出ても20%は正常児です。年齢が高くなると間違いが少なくなって、42才の妊婦での誤診は5%です。
但し「陰性」 (つまり正常児)と出た場合は、誤診は0.1%しかありません。

(2)NT(nuchal translucency:項部透明層)

妊娠10―13週に、超音波断層で胎児の『うなじの皮下の水』の溜まり具合を測定します。測定が難しくて、熟練が必要です。溜まった水の厚さが厚いほど、奇形の可能性が高くなります。
厚さが3.5-4.4mmの場合、染色体異常は21.1%、その他の大奇形10%で、合計すると31.1%は奇形ということになります。
5.5-6.4mmになると、染色体異常50.5%、大奇形24.2%で、合計すれば74.7%は奇形ということになります。
一般的にはNT3mm以上では羊水分析をやった方がよいと言われます。14週以降はNTがあっても、奇形ではありません。
以上NIPTもNTもスクリーニングテストであって、確定診断には羊水分析が必要です。

(3)羊水分析

羊水分析は妊娠16週頃に行いますが、リスクはあります。羊水穿刺が原因で、300人に1人が流産死産になり、100人に1人に破水が起きます。結果が出ない場合もあります。

(付) 超音波断層では、その他の奇形や異常もチェックされますが、すべての胎児異常が診断できるわけではありません。20-27週では胎児心奇形のチェックも行われるようになってきています。
朝比奈
「なるほど。羊水検査はある程度危険を伴うから、羊水検査をする前に、どの程度羊水検査をしなきゃならないかの方法が進歩したってわけですね」
大 川
「今世界中で、羊水検査については『どんどんやって遺伝子的に異常な胎児は堕胎すべき』という優生保護的な考え方をする方と、『やはり小さな命なのだから大切にすべき』という考え方があります。これらは今の日本ではまとまっておらず、また他国ではどうやら前者が多いような気がします。しかし前者の立場を取る場合でも、いざ堕胎をする段になってら悩むカップルが多いのも現実。いくら羊水診断が進んでも、「もしこの子に遺伝子異常がわかったらどうするのか」ということを、検査前からカップルの間で考えて、気持ちを整理してから検査に臨む必要があるでしょう。その気構えがないと、検査をしたことで却って悩むことになりますから。」
大 川
「出生前診断を受ける前に、ある程度考えておく必要があるということですね。非常に良くわかりました。今日はありがとうございました。」

文責 日野市産婦人科医会 会長
大川産婦人科医院 院長
 大川 豐 先生
平成26年6月

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